우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면 / 김초엽 を読んで【韓国書籍】
50冊目
우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면 / 김초엽
わたしたちが光の速さで進めないなら / キム・チョヨプ
韓国書籍も、とうとう50冊目です…!

キム・チョヨプ作家の本は、「地球の果ての温室で」に引き続き2冊目ですが、2冊目にして確信が持てます。
お気に入り作家さんリスト入り確定です…!
SF短編集
私は基本的に物語に深く没頭できる長編小説が好みなのですが、本作は短編集にも関わらず、充分満足のいく没頭感で楽しめました。
独特の世界観を作るのが本当に上手な作家さんだと思います。
全7作が収録されているのですが、驚くべきことに、すべての短編が良かったです…!(短編集でこれは案外珍しいことですよね)
その中でもひときわ心に残ったものはこちらの4編です。
- 순례자들은 왜 돌아오지 않는가 / 巡礼者たちはなぜ帰らない
これを読み終わって、「この著者、天才!」と思いました。
18になると成人の儀式として巡礼の旅に出る風習のある村。
巡礼へ旅立っていく彼らのうち、戻ってこない村人が毎年います。
戻らない人々は、何故、帰ってこないのか。
疑問に思う主人公へ、大人たちは言います。
「巡礼者たちはそこで選択をするのだ」と。誰にも強いられることのない、選択を。
興味をそそられる話ですよね。そして解き明かされるこの謎が、本当に予想外で…!
著者のこの発想はどこから出てくるんだろう、と感嘆のため息をついてしまいました。
大満足の短編です。
- 스펙트럼 / スペクトラム
この話は映画化の構想があるという記事を読みましたが、いつ頃公開なのか気になります。
こちらはSFらしいSFで、異星に取り残された研究者が主人公です。
その星の生命体と共同生活をしながら、奇妙な風習や言葉や生活様式を学んでいくのですが、
人間には感知できない音域が使われている言葉や、視覚機能的に見ることが不可能な色彩を使っているなど
「たしかに、そういうこともあり得るだろうな…」と思える設定が最高に面白かったです。
- 공생 가설 / 共生仮説
動物の鳴き声や赤ちゃんの泣き声を、翻訳機で翻訳できたらいいですよね。
何を考えているのか知りたいですし、分かればその要求を満たしてあげられるので便利でもあります。
そんな研究をしている研究者が、赤ちゃんの泣き声から奇妙な翻訳が訳出されていることを発見します。
「おなかすいた」 、「ねむいよー」、といった考えに混ざって、高度な知的水準の謎の発言が翻訳されてくる…という奇妙な現象。
こんなことを赤ちゃんが考えているはずがないのに…?
そこから先は、鳥肌がたつような怒涛の展開です。
- 우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면 /わたしたちが光の速さで進めないなら
表題作でもある本作。
閉鎖されて久しい廃墟状態の宇宙ステーションで、宇宙船を待ち続ける老女の話です。
いったいどんな事情があって待ち続けているのか。
彼女が語る過去の話は、とてもSFらしい宇宙の話ではあるのですが、現代にも通じるところがあります。
特に、連邦政府の決定と様々な事情が絡み合って起こってしまった、家族の分断。
ひとつの「人類」という民族が、二度と会えないレベルで分断されてしまうようすなど。
韓国の歴史を考えると、こういった発想はとても韓国らしく、韓国の作家だからこそ、その悲哀をより切々と描けたような気もします。
心を打つ、良い話でした。
まとめ
こうも面白いと、作家に対する絶対の信頼感が生まれます。
しかも93年生まれと非常に若く、これからもたくさんの作品を生み出してくれるだろうことを思うと、
将来も本当に楽しみですよね…!
キム・チョヨプ作家の作品、引き続き読んでいこうと思います~。
以上、「わたしたちが光の速さで進めないなら」の感想でした。